PC組み立てなど一切面倒なことをせずに自宅にLinuxサーバを立ててみたいけど、やり方が分からない。
具体的な手順を教えて欲しい。
こんなお悩みを解決します。
先日、自宅で使用していたサーバがお亡くなりになりました。
環境自体はDockerで構築していたため問題なかったのですが、DNS、Webサーバ、NASなどが一度に使えなくなってしまったため、新しいマシンを購入し、サーバを立てることにしました。
今回は、OSのインストールだけですぐに使える小型のデスクトップ型PCを利用し、Linuxサーバを構築する方法を解説していきます。
購入したマシンをベースに、環境構築時の手順をステップごとに説明しますので、興味がある方はぜひ最後までご覧ください。
購入対象商品
今回は、以下の観点で新しいPCを選定しました。
- Windows OSが付属している。
- 補助記憶装置(SSD、HDD)が2つ以上搭載されている。
- 組み立てが不要ですぐに使える。
- 価格が5万円程度である。
これを満たすものとして、以下の「ECS LIVAZ(N4200)」がマッチしました。今回は、下記のシリーズを対象にLinuxサーバを構築していきます。
上記のPCは普段使いする上では少し物足りませんが、サーバ用途であれば十分なスペックであると思っています。
注意点1:今回の説明で利用するPC
今回、私が購入したPCはメモリが16GBに増設されたものとなります。
搭載するメモリは利用者によって異なりますので、よく確認した上で購入してください。
注意点2:PC以外に必要なもの
Linuxサーバを構築するにあたり、以下の周辺機器が必要になります。
普段、デスクトップPCを利用している人は問題ないですが、ノートPCを利用している方は追加で準備が必要になるため、不足しているものは合わせて購入をお願いいたします。
- インストール用のUSBメディアを作成するためのPC
- モニタ
- キーボード
- マウス
- LANケーブル
- 8GB以上のUSBメディア(インストール用のUSBメディアを作成する際に利用します)
USBメディアは、8GB以上であれば機種や型番は問わないです。
私は以下のシリーズのUSBメディアを利用しました。
環境構築
では、実際に環境構築を始めていきます。
Linuxサーバを構築する際のステップは、以下のようになります。
今回は、すでにWindows OSがインストールされているため、Dual Boot環境を構築する方法を併せて説明します。
Linux OSだけインストールされていれば良い方は、グレーの【任意】となっている部分は読み飛ばしていただいて構いません。
Step1:インストール用のUSBメディア作成
Linuxサーバを構築するにあたり、OSをインストールするためのUSBメディアを作成する必要があります。
8GB以上の空のUSBメモリを用意する必要があるため、手元にない方は各自購入をお願いいたします。
Step1-1:Linux OSのダウンロード
インストールする対象のOSをダウンロードします。
ここでは、Ubuntu Server 22.04 LTSをインストールする前提で説明します。
下記のリンクからUbuntu Server 22.04 LTSのISOファイルをダウンロードしてください。
Step1-2:必要なソフトウェアのダウンロード
インストール用のUSBメディアを作成するためには、専用のソフトウェアが必要となります。
今回は、「balenaEtcher」を利用する方法を説明します。
下記のリンクから、balenaEtcherをダウンロードし、インストーラーの内容に従ってインストールをしてください。
Step1-3:インストール用のUSBメディア作成
balenaEtcherを用いると、以下の3Stepでインストール用のUSBメディアを作成できます。
- 書き込むISOファイルの選択
- PCにUSBメディアを差し込み、書き込み先のUSBメディアの選択
この時、USBメディアのラベル名をよく確認した上で選択してください。 - 書き込み処理を開始するボタンの押下
Step3を実施後は、書き込みが終わるまでしばらく待ちます。
Step1.5:【任意】プロダクトキーの調査・記録
Step1.5の実施は、任意となっています。Windows OSもインストールし、Dual Bootする人は内容を確認しておいてください。
購入したECS LIVAZ(N4200)にモニタ、キーボード、マウスを接続し、PCの電源を入れます。
そして、画面の指示に従ってセットアップをします。
セットアップ完了後、メモ帳を開き、以下のスクリプトを作成します。
スクリプトを作成する際は、「.vbs」という拡張子で保存して下さい。
Set WshShell = CreateObject("WScript.Shell")
MsgBox ConvertToKey(WshShell.RegRead("HKLM\SOFTWARE\Microsoft\Windows NT\CurrentVersion\DigitalProductId"))
Function ConvertToKey(Key)
Const KeyOffset = 52
i = 28
Chars = "BCDFGHJKMPQRTVWXY2346789"
Do
Cur = 0
x = 14
Do
Cur = Cur * 256
Cur = Key(x + KeyOffset) + Cur
Key(x + KeyOffset) = (Cur \ 24) And 255
Cur = Cur Mod 24
x = x - 1
Loop While x >= 0
i = i - 1
KeyOutput = Mid(Chars, Cur + 1, 1) & KeyOutput
If (((29 - i) Mod 6) = 0) And (i <> -1) Then
i = i - 1
KeyOutput = "-" & KeyOutput
End If
Loop While i >= 0
ConvertToKey = KeyOutput
End Function
作成したスクリプトをダブルクリックで実行すると、メッセージボックスにプロダクトキーが表示されるので、紙などに記録しておきます。
Step2:BIOSの設定
インストール用のUSBメディアが作成できた後は、実際にインストールを進めていくのですが、その前にBIOSを開いて起動順序を変更する必要があります。
通常、PCが起動する場合、OSがインストールされているディスクにアクセスするため、ブートローダーというものが読み込まれます。
BIOSの設定画面を開くことで、ブートローダー以外を指定することが可能となります。
今回は、USBメディアからインストールをしたいため、ブートローダー以外を最初に読み込むよう、設定を変更します。
以降では、ECS LIVAZ(N4200)のBIOS画面における設定方法を解説します。
他のPCでもほとんど同じ形式になるため、各自の環境に合わせて設定して下さい。
Step2-1:PC起動時にDELキーを連打
まず、キーボード、マウス、USBメディア、LANケーブルを接続し、PCを起動します。
PC起動時に、マシンのロゴが表示されると思うので、画面が切り替わるまでDeleteキーを連打します。
連打するキーは、PCによって異なるため、PC起動時の画面の右下あたりに表示されるメッセージを参考に、臨機応変に対応してください。
成功すると以下のようなBIOS画面が表示されます。
Step2-2:起動時の挙動変更
次に、起動時の挙動を変更します。キーボードの矢印キーを用いて、bootのタブを開いてください。
上記の図に対し、それぞれ以下のように変更します。
大分類 | 中分類 | 変更前の内容 | 変更後の内容 |
---|---|---|---|
Boot Configuration | Operation System Select | Windows 8.x/10 | Linux |
Set Boot Priority | Boot Option#1 | Hard Disk: Windows... | USB Flash |
変更後の図において「Set Boot Priority」がいくつか変更されていますが、「Boot Option #1」に「USB Flash」が選択されていれば問題ないです。
Step2-3:セキュアブートの無効化
そして、セキュアブートを無効化します。Linux OSをインストールする際に悪さをすることがあるため、セキュアブートを無効にしておきます。
下図のようにSecurityのタブに移動し、Secure BootをEnabledからDisabledに変更します。
Step2-4:変更内容の保存&再起動
最後に変更内容を保存し、再起動します。
Exitのタブに移動し、「Save Changes and Exit」を選択します。
Step3:Linux OSのインストール
やっと本題に入れます。
USBメディアを接続した状態でPCを起動すると以下のような画面が表示されていることを確認します。
表示されない場合、BIOSの設定(boot部分)が間違っている可能性が高いため、設定を見直してみて下さい。
この状態になったら「Try or Install Ubuntu Server」を選択し、Enterキーを押下します。
後は、画面の内容に従ってインストールを進めていきます。
Step3-1:言語の選択画面
言語の選択画面が表示されます。ただ、日本語は選択肢に含まれていないため、英語(English)を選択して進めていきます。
Step3-2:キーボードレイアウトの選択画面
キーボードレイアウトの選択画面が表示されます。
日本語配列のキーボードを使っている方が多いと思うので、「Japanese」を選択して進めていきます。
Step3-3:OS構成の選択
インストールするOS構成の選択画面が表示されます。
必要な機能が一通り含まれている方が良いため、「Ubuntu Server」を選択します。
Step3-4:ネットワークの選択画面
ネットワークの選択画面が表示されます。
接続しているEthernetインターフェースやIPアドレスの情報が表示されますが、特段変更する部分はないため、そのまま次へ進めます。
Step3-5:プロキシの設定画面
プロキシの設定画面が表示されます。特段変更する部分はないため、そのまま次へ進めます。
自宅でプロキシサーバを立てている人は、自分の環境に合わせて設定してください。
Step3-6:ミラーサーバの設定画面
ミラーサーバの設定画面が表示されます。
これは、apt
コマンドを実行する際に参照するミラーサーバとなります。特段変更する部分はないため、そのまま次へ進めます。
Step3-7:パーティション設定画面
ここが一番の鬼門となります。
Linux OSのみをインストールする場合とLinux OSとWindows OSをインストールし、Dual Bootする場合でインストール先を変更することを考えます。
構成例1:Linux OSのみをインストールする場合
下記のようにeMMC側にLinux OSをインストールします。SSD側はデータ保存用に利用する運用となります。
構成例2:Linux OSとWindows OSをインストールし、Dual Bootする場合
下記のようにSSD側にLinux OSを、eMMC側にWindows OSをインストールします。
今回のPCの場合、Windows OSは後から再インストールが必要になります。
今回は、構成例2を取り上げて解説します。このため、少しややこしい設定となっています。
まず、以下の2点を確認します。
- 「Use an entire disk」に「X」マークがついている
- local diskとして「58.287GB」のeMMCが選択されている
次に、「FILE SYSTEM SUMMARY」の画面が表示されたら、下側にあるResetを押下します。
そして、画面のようにパーティションの内訳を変更します。私の好みなので適宜変更していただいて構いません。
設定完了後、次へ進めます。
Step3-8:プロファイルの設定画面
ログイン時のユーザ名やパスワードの設定画面が表示されます。
ここで登録するユーザにはsudoグループに追加され、管理者権限が必要なコマンド実行時に利用することになると思います。
忘れないユーザ名を設定しておいてください。
今回は、以下のように設定しました。自身の好みに合わせて設定してください。
項目 | 内容 |
---|---|
ユーザ名 | user |
サーバ名 | ecsliva |
パスワード | user |
Step3-9:SSHサーバの設定画面
SSHサーバの設定画面が表示されます。基本的にssh
コマンドを用いてアクセスすることになるため、インストールしておくことをオススメします。
Step3-10:インストールパッケージの選択画面
OSインストール時にあわせてインストールするパッケージの選択画面が表示されます。必要に応じて選択してください。
私は、Dockerで環境構築することが多いため、Dockerを追加でインストールしています。
Step3-11:OSインストール画面
OSのインストール画面が表示されます。インストール完了後、画面下側に「Reboot Now」という項目が表示されるので、押下します。
また、再起動直前にUSBメディアを取り除くように指示されるため、USBメディアをPCから抜き取った後、Enterキーを押下します。
再起動後、Ubuntu Serverが起動すればインストール成功です。
インストール完了後、BIOSの設定画面を開き、「Set Boot Priority」で「Boot Option #1」が「Hard Disk」になるように順番を変更しておいて下さい。
Step4:【任意】Windows OSのインストール
Step4の実施は、任意となっています。Windows OSもインストールし、Dual Bootする人は読み進めてください。Linux OSのみをインストールする人は読み飛ばしてください。
ただ、インストール時の画面を撮影し忘れてしまったため、手順のみ説明します。
Step4-1:インストール用のUSBメディア作成
Linux OSインストール時と同様にWindows OSをインストールするためのUSBメディアを作成します。
まず、先ほど作成したUSBメディアをフォーマットしておきます。
そして、下記のMicrosoftの公式サイトを参考に、インストール用のUSBメディアを作成します。
上記のサイトのうち「ツールを今すぐダウンロード」を押下し、必要なソフトウェアをダウンロードします。
そして、「このツールを使用して、別の PC に Windows 10 をインストールするためにインストール メディア (USB フラッシュ ドライブ、DVD、または ISO ファイル) を作成する」を参考に、インストール用のUSBメディアを作成します。
Step4-2:Windows OSのインストール
Linux OSインストール時と同様に、作成したUSBメディアを差し込んだ状態で、PCの電源を入れます。
後は画面の指示に従ってインストールを進めます。この時、Windows OSのインストール先は64GBのeMMCを選択します。
インストール先を間違えると先にインストールしたLinux OSが消えてしまうため、注意してください。
Step4-3:起動時の優先度と起動対象OSの設定
インストール完了後、BIOS画面を開き、「Set Boot Priority」の「Boot Option #1」が「Hard Disk」になるよう、変更しておきます。
また、Dual Bootの設定となっているため、優先して起動するOSを選択しておきます。
ここでは、Linuxサーバの環境構築がメインですので、Ubuntu Serverが最初に起動するよう、設定を変更しておきます。
具体的には、「UEFI Hard Disk Drive Priorities」を押下し、「Boot Option #1」が「Ubuntu Server」となるように設定を変更します。
以上で環境構築完了となります。お疲れ様でした。
まとめ
今回は、Linuxサーバを構築する方法について解説しました。
事前準備
事前準備として、以下が必要になります。
- Linuxサーバとして運用する用のPC
- インストール用のUSBメディアを作成するためのPC
- モニタ
- キーボード
- マウス
- LANケーブル
- 8GB以上のUSBメディア
今回、Linuxサーバとして運用する用のPCは以下を利用しました。
また、USBメディアは以下を利用しました。
環境構築方法
以下のStepを踏むことでLinuxサーバを構築できます。
ここで、グレー部分はWindows OSとのDual Boot環境を構築する際の手順のため、不要な方は読み飛ばしても問題ないです。